あなたも明日から実践できる? 日本医師会に学ぶ処世術

日本医師会の名前をニュースで見ない日はないほど、コロナ禍で同団体の動きが注目されている。コロナ対策をリードする立場というのもあるが、最近は緊急事態宣言やまん延防止法が日本中に適用されている中、政治資金パーティーに出席するなどその矛盾した行動も指摘されてきた。しかし日本医師会のバッシングが広まる気配はない。なぜか。この理由がわかれば、私達も少々の失敗があっても批判を浴びる心配がないかもしれません。
ニッポンの数字 2021.06.14
誰でも

コロナをきっかけに日本医師会という名前を覚えた人は多いのではないでしょうか。最近は日本医師会という言葉をメディアで見かけない日はないと言っても過言ではありません。

日本医師会というのは開業医を中心とした医師の団体です。具体的には政府に政策提言をしたり、あるいは政府が医療関係の政策を進める際に助言を得たりします。日本医師会に限らず自動車業界や金融業界などこうした団体は殆どの業界で見られます。

この日本医師会ですが、良い印象を持っている人はどれだけいるのでしょう? 業界団体というだけで利益誘導の悪印象があるのに新型コロナの感染防止のための自粛を呼びかけておきながら自らは政治資金パーティーに参加するなど矛盾した行動をしています。

それにもかかわらず日本医師会への批判は大きく取り上げられません。なぜでしょうか。この理由がわかれば、私たちだって間違いを犯しても批判されることのない術を身につけられるかもすれません。今回のニュースレターでは日本医師会を思いっきり褒めちぎってみたいと思います。

相手に恩を売れ!

相手を手懐けるのに手っ取り早いのはお金です。下記は自民党に献金している団体の一覧です。日本医師会の政治団体である日本医師連盟は毎年2億円の献金を行なっています。

自民党への献金の総額は毎年30億円弱なので総額の10%程度のシェアになっています。これだけのお金をあげれば相手も何かしらの便宜を図らずにはいられません。

しかし一般の人が何でもお金で解決することは難しい。けれども恩を売るのはお金をあげること以外でもできます。困っているときに声をかけてあげたり、面倒な仕事を引き受けることでも相手に恩を売ることができます。日本医師会はそれがたまたまお金だったためです。相手に恩を売るのはお金がなくてもできるのです。

大仕事で満足するな 選択と集中で個人もフォローしろ

金額は多いものの、自民党への献金だけで終わってしまったら並の企業と一緒です。日本医師会には個別の国会議員にもフォローするきめ細やかさがあります。ざっと調べただけでも有力議員にはほぼ献金を行っています。下記は2019年に日本医師会が献金した主な議員です。

安倍晋三 300万円
麻生太郎 150万円
岸田文雄 100万円
自見英子 800万円
武見敬三 300万円
田村憲久 200万円
茂木敏充 90万円
石破茂 50万円
林芳正 30万円

日本医師会が議員個人に献金している(政治資金パーティーでの献金含む)のは自民党の総裁選に出た経験のある議員がほとんどです。自見英子議員と武見敬三議員は聞き慣れない名前かもしれませんが、この二人は日本医師会を支持団体としている議員です。田村憲久議員は現厚労大臣で、2012年12月-2014年9月にも厚労大臣を務めています。

並の人なら2億円の献金をしたところで満足してしまうところですが、その後個人的にフォローすることも自分たちの思いを理解してもらえるのに大事な作業です。しかも日本医師会は役職によって金額に差をつけることによって偉い人のプライドを傷つけないようにしています。

お金があるからといってみんなにバラまくのは効率が悪い。お金をあげるのはキーマンだけで構いません。選択と集中をすることでお金を節約できますし、渡した人も自分が特別だと思ってくれるはずです。

関係者全てをフォローするきめ細かい会社の営業マンもいるでしょう。しかし、権限のない人に営業しても意味がありません。むしろその時間とお金を他に使うという判断もビジネスマンとして必要です。日本医師会はそうしたビジネスの王道を実践しているわけです。

できる人間は見えないところでさりげなく気遣い

これだけ戦略的に献金しているところを見ると私たちが気づかないところでも努力していると考えるのが普通です。批判を封じるには与党だけでなく、野党とマスコミも抑えなければなりません。

これは私の想像ですが、献金という形ではないにしても政策提言で野党の意見にも配慮したり、記者には情報をリークして恩を売るなど、相手が自分の敵にならないよう行動に気をつけているのではないでしょうか。そうでなければ、「パーティーに行きたかったから自分だけ優先的にワクチン打ったのかよ」とテレビと新聞で大々的に批判されるはずです。それがないということは陰ながら努力をしているということでしょう。

番外編 ニトリは政商になれるか

日本医師会の国家議員への献金状況を調べるにあたりいろいろな議員の政治資金収支報告書を見ていたのですが、日本医師会以上にその名を見るのがニトリでした。

日本医師会は私が調べた限り与党議員にのみ献金していましたが、ニトリは野党の有力議員にも献金しています。金額はだいたい50万〜100万円です。総務省の「国会議員関係政治団体の収支報告書」から知っている国会議員の名前の収支報告書を見るとニトリの名前が散見されます。

ニトリは家具・日用品の小売です。自身に有利になるような政策となると消費減税でしょうか。しかし、ニトリが消費減税に向けてロビー活動をしたり、個人消費を喚起するような政策を主導したということを聞きません。正直、なんでここまで献金に熱心なのかわかりかねるのですが、ニトリの社長の言動は今後注目しておいたほうがいいかもしれません。

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