物流の動向を把握する意外な指標 - ZOZOとユナイテッドアローズの差とは?

コロナ禍で外出が減り、ネット通販を利用している人も多いはず。ネット通販を手掛ける企業の業績は良いところが目立つが、業界全体の動向を把握するのにおもしろい指標がある。国土交通省が毎月発表している「建築着工床面積」だ。これを見ると物流施設の需要が高まっていることがよくわかる。
ニッポンの数字 2021.05.15
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5月になって2021年度の経済指標が出揃ってきました。コロナ禍では悪い経済指標がクローズアップされがちですが、好調だった業界ももちろんあります。

緊急事態宣言中、ネットショッピングをした人は多かったのではないでしょうか。お店がしまっている中でもネットショップは24時間営業。私は自宅に荷物を届けてくれる人の顔を配送業者別に覚えました。

「物流」と聞くとヤマト運輸や佐川急便などの配送業者を連想する人が多いと思います。

宅配業者やネット通販の会社の動向を見ることでネットでの消費動向を把握することが可能ですが、政府の統計にもネットでの消費動向が垣間見れるものがあります。下記は国土交通省が毎年発表している建築着工統計から、建築着工床面積(民間非住宅)の動向を年度ベースでグラフにしたものです。

何で建物の棟数ではなく床面積という単位を採用しているかというと、規模感の比較をより正確にするためです。前年に比べて多くの建築物が建てられたとしてもそれがコンビニエンスストア程度の小ぶりのものばかりですと、床面積ベースで見たら前年を下回っている可能性があります。

建築着工床面積の統計は建物の用途別の数値も見ることができます。下記は倉庫の床面積の推移を表したグラフです。

倉庫は物流施設のことですね。グラフを見ると倉庫の着工床面積は右肩上がりで増えていく様子が見てわかるでしょう。倉庫の需要を支えている1つがネット通販です。ネット販売をしている会社はお店を構える必要がありませんが、商品の在庫を保管する場所が必要です。そこで倉庫の出番が出てくるわけです。

ちなみにこの倉庫と店舗の着工床面積の推移を比べるとおもしろいことがわかります。

倉庫は右肩上がりなのに対し店舗は右肩下がり。お店に足を運ぶ回数が減ったおかげで店舗の需要が弱くなりました。そしてネット通販の台頭が店舗需要を飲み込んでいく様子が見て取れます。

この傾向は企業の業績にも表れています。アパレルのZOZOとユナイテッドアローズの業績を比べてみましょう。最初のグラフが売上、2番目のグラフが純利益の推移です(2022年は予測値)。

ZOZOはアパレルのネット販売、ユナイテッドアローズのほうは主に店舗を構えて洋服を販売するアパレル企業です。建築着工床面積でいうと「倉庫」がZOZO、「店舗」がユナイテッドアローズにあたります。アパレル業界は成長産業とは言いづらいですが、販売手法の差でかなり大きな差が出ていそうです。

ZOZOは物流拠点をさらに拡大する方針です。

千葉は拠点を集約しさらに拡大。最近は茨城での拠点開発にも熱心です。

ちなみに不動産投資の大きなセグメントとして従来は、オフィス、商業施設、住宅がメインでしたが、この10年ほどで物流施設も投資対象として脚光を浴びています。上場不動産投資信託のJ-REITにも物流施設に特化した銘柄が複数ありますが、その話はまたの機会に。最後に、今後の執筆の参考にするため簡単なアンケートにぜひご協力を。

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