いいじゃんGoToキャンペーン - 11月の雇用統計から評価してみた

総務省が25日に公表した11月分の労働力調査によると、11月の完全失業率は2.9%(季節調整値)で4ヶ月ぶりに2%台に回復した。12月に入って新型コロナの感染が拡大し足元の雇用環境は悪化が見込まれるが、それがなければこのまま雇用環境が回復軌道に乗る可能性があった。回復要因の1つがGoToキャンペーンだろう。
ニッポンの数字 2020.12.27
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総務省が25日に公表した11月分の労働力調査によると完全失業率は前月比0.2ポイント改善し2.9%(季節調整値)でした。2%台になったのは4ヶ月ぶりです。

ただ、12月に入ると新型コロナの感染拡大が広がり、GoToキャンペーンも中断しましたから、飲食店や観光業界は苦しい状況に後戻りしてしまいました。書き入れ時の12月に自粛要請が国から再度出たわけですから、雇用環境はまた悪化しているはずです。せっかく明るい兆しが見えたかに思えただけに残念です。

それはそうと、GoToキャンペーンって雇用環境にもそれなりに好影響を与えていたのではないでしょうか。GoToキャンペーンは「Go To トラベル」が7月、「Go To Eat」が9月から開始しました。秋口からGoToキャンペーンの認知度もだいぶ広まったようで、旅行会社HISの月次動向を見ると、10月の国内旅行扱高は前年比約20%減まで回復しました。7月と8月は前年比約80%減だったので、かなりの回復ぶりです。11月の数字はまだ公表されていませんが、まだキャンペーンは継続していたので10月からさらに改善している可能性もあります。

就業者数も増加

完全失業率は、働きたい人(失業者)と働いている人(就業者)を合わせた数字のうち、働きたい人(失業者)の割合を示したものです。従いまして分母の就業者が増えるか分子の失業者数が減ると、完全失業率は改善します。11月は就業者が前月比で43万人増え、失業者は16万人減るというハッピーな状況でした(いずれも季節調整値)。

GoToキャンペーンのおかげだけで11月の雇用環境が改善したというと乱暴ですが、少なくともGoToキャンペーンがプラスに働いたと考えてよいかと思います。下の表は産業別の就業者数の前年比です。このうち「宿泊業、飲食サービス業」の11月の就業者数は前年比29万人減少していますが、前月から減少幅は縮小しています。新型コロナの感染拡大がなければ引き続き改善していた可能性があったのにと思うと本当に残念です。

女性の正社員数は増え続けている

GoToキャンペーンとの関係は不明ですが、コロナ渦でも女性の正社員数は増えています。これはコロナ前からのトレンドで、女性の正社員数は2014年12月から前年比プラスが続いています。下図は女性と男性の正社員数の前年比の推移です。オレンジ色の線が女性です。

コロナ前の完全失業率は歴史的な低水準で人手不足が続いていました。そんな中で子育てしている女性にも活躍してもらわないと困るということになったのでしょう。最近は残業時間も減って、少なくとも以前よりは子育て世帯の女性も働きやすい環境になったとも思います。

ただ、コロナ渦で雇用環境が悪化している今でも、女性の正社員数がコロナ依然と同じトレンドで推移しているのは不思議です。この謎を解くヒントを見つけたらぜひ紹介させていただきますね。

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