財テク国家ジャパン ー 税外収入から見る日本の財政

2019年度の税外収入は前年比+48.5%の7兆4,163億円。法人税収に迫る金額だ。毎年5兆円程度は得ている税外収入は、外為特会や日銀納付金から成る。
ニッポンの数字 2020.11.29
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私の住まいは千葉県なのですが、朝晩が寒くなってきましたね。私は今月に入って暖房を付けっぱなしにしています。大きな掃き出し窓がある部屋で寝ている私には就寝中も暖房は必須です。じゃないと朝起きたときに外で寝てるんじゃないかと思うぐらい寒さですから。以前は電気代とかエネルギーの無駄遣いとかを気にしていたんですけど、電気ストーブを断続的に使うよりエアコンの暖房を付けっぱなしにしていたほうが電気代が安かったことがわかった(環境によって違うかも)ので、暖房の付けっぱなしおすすめです。

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国の決算って皆さん見たことありますか。企業の決算は発表直後にニュースになりますが、国の決算はなぜかニュースにならないんですよね。

例年11月になると国の決算書が国会に提出されます。大まかな数字は7月頃に公表されるのですが、細かい数字が把握できるのはこのタイミングになります。

国の決算を企業に例えるのは無理がある気がしますが、あえて例えると、企業の売上は国の税収などにあたります。所得税や消費税、相続税などですね。売上に当たる部分はもう1つあって、それが税外収入になります。文字通り、税以外から入ってくる収入です。

この税外収入、結構あります。図は税外収入の推移です。2019年度の税外収入は前年比+48.5%の7兆4,163億円でした。

税収の柱の1つである法人税収が2019年度は10兆7,971億円だったので、税外収入はかなりの金額ですね。年度によって額は異なりますが、少なくとも毎年5兆円以上は期待できそうです。では、この税外収入、一体どこから発生するものなのでしょうか。

外為特会は政府の財テク

政府の財布には特別会計というのもあるのですが、その中でも外国為替資金特別会計(外為特会、「がいためとっかい」と言う)からは毎年1兆円を超える受入金があります。

外為特会には100兆円以上の外貨証券があり、その運用収入が兆単位の剰余金を生んでいるのです。何で100兆円もの外貨証券が必要なのかと言えば為替の安定のためらしいです。急激な為替変動があったときに政府が介入するということなのでしょう。

しかし、変動相場制の日本では為替は日々の市場の取引でレートが決まり、政府がそこに介入するのはルール違反です。仮に介入が必要だとしても本当に100兆円もの資産が必要なのかと疑問です。「財テク」と言っても差し支えないでしょう。

日本銀行が国債買えば借金チャラ

金融緩和という言葉を皆さん聞いたことがあると思います。金融緩和とは日本銀行(中央銀行)がお金の発行する量を増やして景気を刺激することを言うのですが、日銀は増やしたお金で主に国債を購入します。国債は金融商品ですから、持っていれば利息収入を得られます。その収入が「日本銀行納付金」として国に納付されるわけです。外為特会と同様に財テクですね。下のグラフは日本銀行納付金の推移です。

ここで「あれっ」と思いませんでしたか。国債は国の借金で、国は国債保有者に利息を払わなければなりません。しかし国債保有者が日銀の場合、払った利息が自分(国)に収入として帰ってくるのです。これは通貨を発行できる国だからこそなせる技なんですね。

「お金は労働の対価」とだけ考えているとこの部分は理解できません。個人と企業の関係においてお金は労働の対価と言えますが、国にとってお金は経済活動の調整弁のようなものです。

例えば、100万円持って原始時代に行っても何の使い道もないでしょうが、今100万円もらったら1日で使い切ってしまう人もいるでしょう。車が欲しい人は「100万円じゃ足りない」と駄々をこねるかもしれません。

お金というのはモノ・サービスがないと使いどころがありません。そしてそのモノ・サービスがどんどん増えたら? その量とともにお金の量も増やさないとモノ・サービスが購入されにくくなり、モノ・サービスの提供者は価格を下げないと売上が立たなくなりますね。

お金の量はモノ・サービスの量に比例して増やさないといけません。そうじゃないと、安売りが横行してしまいます。安く買うことができた人はハッピーですが、安売りの背景には経費や人件費のカット、もっとひどくなるとリストラがあります。

現代はパソコン1台で無限大の価値を創出できます。これだけモノ・サービスの供給量が多くなると、それに合わせて政府もお金を市場に供給しないといけません。「国にとってお金は経済活動の調整弁」と言ったのは、こういう背景があります(ちょっと脱線しました…)。

競馬や交通違反の取り締まりは事業

税外収入で目立つのが外為特会と日銀からの納付金なのですが、それ以外にもおもしろいのがあります。下の図は一例です。

JRA(日本中央競馬会)は国の機関です。機関というよりも国営会社ですね。そのJRAからは毎年3,000億円程度の納付金があります。電波利用料収入というのはテレビや携帯電話会社が国に支払っているお金ですね。国の電波事業と言っていいかもしれません。一番最後の行に「交通反則者納付金」というのがあります。交通違反の罰金が国の収入になっているわけですね。

税外収入を見ていると、「日本の財政ってホントにピンチなの?」と疑問に思いませんか。本当にピンチだったら外為特会で100兆円使って財テクなんかしてる暇ないでしょと私は思います。なのに消費税が10%に上がってしまうのですから、「金と塵は積もるほど汚い」という諺のとおりですね。

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