11月の個人消費をチラ見 - ニトリ、しまむら、西松屋

毎月20日締めで1ヶ月間の売上速報を出すニトリ、しまむら、西松屋。3社だけですが、速報性が高いのでその月の個人消費を把握するのに参考になります。翌月上旬には小売各社の売上動向が出揃ってきますが、ニトリ、しまむら、西松屋の月次売上を見て11月の個人消費をチラ見してみましょう。
ニッポンの数字 2020.11.25
誰でも

ニトリ、しまむら、西松屋の3社が11月(期間10/21-11/20)の売上を24日公表しました。いずれも前年を大きく上回り好調です。

コロナ禍でも好調の3社ですので、この3社の売上を見て「11月の個人消費は好調だ」と言うのは早計です。せめて売上増加率が前月と比較して拡大したのか、縮小したのかくらいは見たいところです。

在宅勤務関連の需要はまだ底を見せず

ニトリの11月の既存店売上高は前年比+13.4%でした。10月の+2.0%から大きく拡大していますが、いずれも前年の増減率が大きかった(昨年消費増税があったため)のでその反動が出ています。

ニトリは10万円給付効果で今夏売上を大きく伸ばしました。さすがにそのときの勢いは今ありませんが、9月は消費増税の駆け込み需要があった前年と遜色ない売上を記録し、11月も二桁増だったのですから好調維持と見ていいでしょう。

何でこんなに好調なのかといったら在宅勤務の普及で、自宅で仕事するのに家具を新調したりする人が多いようです。ニトリのIRページでこう解説しています。

 11月度は、在宅勤務需要継続により、ホームオフィス家具の売上が好調でした。また、ホームファッション品全般も好調に推移致しました。TVCM効果もあり、季節家電や季節商材の寝具・寝装品が売上を牽引した結果、既存店売上高前年比は+13.4%、全店では+16.3%となりました。

在宅勤務が普及しだしたのは今春からですが、たしかに今でも「これがあったら便利なのに」と思うことはよくあります。私も家具ではありませんが、ノートパソコンにつなぐ外部ディスプレイを最近購入しました。こうした「ホームオフィス」としての需要が11月に入っても底堅いようです。

子育て世帯のニーズを掴む西松屋としまむら

アパレル企業の不振が言わる中、西松屋としまむらはコロナ禍でも絶好調です。西松屋の11月の売上高は前年比+7.3%、しまむらは+11.3%でした。

「何でこんなに好調なの?」と驚いている人も多いと思います。きちんと分析できていないのですが、おそらく昨年10月から実施された幼児教育・保育の無償化が少なからず影響を与えていると思います。これにより子育て世帯の財布に余裕が生まれ、そのお金の一部が子供服に向かっているのでしょう。子供服が専門の西松屋は、幼児教育・保育の無償化で大きな恩恵を受けています。

しまむらも子供服の売上が伸びていますが、しまむらが好調なのは巣ごもり消費を取り込んでいることも大きいようです。

当月度は、月度を通じて朝晩の冷え込みが強まり、晴天の日も多く、冬物商品の販売には適した気候となりました。アウター衣料では、プライベートブランド「CLOSSHI」や新ブランド「SEASON REASON」の冬物のプルオーバーやパンツが、実用品では、あったか素材「FIBER HEAT」の肌着や寝具が売上を伸ばしました。また、冬物のリラクシングウェアやスポーツウェアも巣ごもり需要により引き続き好調でした

最後の一文の意味は、家で着る用の服がよく売れているということです。おしゃれして外出する必要がないからしまむらで事足りる、と言ったら関係者に怒られそうですが、おそらくそうした消費者の需要を取り込んでいるのでしょう。そして11月も変わらずそうしたニーズが強く、がっちり需要を掴んだようです。

11月の個人消費(サービス業除く)は悪くはない?

上に挙げた3社はコロナ禍を追い風にしているふしがあり、3社の業績を他の小売店全てに当てはめることはできません。しかし3社とも売上が鈍化したようには見えないので、11月に入って個人消費が鈍くなったということはなさそうです。ただ、新型コロナの感染者数がここに来て急増しているので、11月下旬以降の動向には要注意です。

ちなみにここで言う個人消費は小売りに限ったことで、サービス業(イベント消費とか)は考慮していません。人数制限は人との接触を最小限にして営業している以上、こちらの復活はまだ厳しいでしょう。

***

10月21日 - 11月20日の期間で売上を集計している3社の売上を見てみました。他にも20日締めの企業で月次売上情報を公開している企業がありましたら@nippon_num にでもツイートしてぜひおしえてください!

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