リーマンショックとは異なる景気悪化 - 日銀短観から見える業界格差
14日に日銀短観が発表されました。何だか大げさな統計名ですが、簡単に言ってしまえば企業に対するアンケート調査です。「集計が終わったから結果を発表するね」といった感じで公表したのが14日だったということです。
日銀短観には多くの調査項目があるのですが、よく取り上げられるのが「業況判断」です。景気がいいか悪いか聞いてみたってことですね。最新の結果がこちらになります。
日銀短観は四半期ごとに調査しているので、前期比は10月調査との比較になります。ざっくり言うと、数値は「景気が良い」という回答数から、「景気が悪い」という回答数を差し引いたものです。従いまして、数値がマイナスですと「景気が悪い」と答えた企業のほうが多かったということになります。
全体(全産業)の数値は▲15ですが、前期比で見ると+13ポイントアップしています。緊急事態宣言明けの夏場より景気はマシになってきたということでしょう。
マイナスは異常事態 ただリーマンショックよりマシ
とはいうものの、アベノミクス当初から新型コロナが流行する手前まで、業況判断はプラスで推移していましたので、マイナス圏で推移しているのは異常事態です。
今回のコロナショック、リーマンショックと比較して語られることが多いですが、リーマンショックの頃と比較すると谷は浅いです。下図は2008〜2020年の業況判断の推移です。これだけ見ると今回のコロナショックは「プチリーマンショック」と言ったところでしょうか。
ただ、この数値はあくまで「全産業」です。業種別に見るとまた見方が変わってきます。下図では「宿泊・飲食サービス」「建設」「情報サービス(IT)」の3業種を取り上げて、その推移を記したものです。
「宿泊・飲食サービス」はGoToキャンペーンが効いたのか直近大きく戻しています。それでも▲48はリーマンショックの時期を下回る水準です。一方で「建設」「情報サービス」はコロナ後もプラス圏内で推移しています。いずれもリーマンショックの時期はマイナス圏内で推移していましたが、今回は傷が浅かったようです。
業界の違いで格差が鮮明
「宿泊・飲食サービス」「建設」「情報サービス(IT)」の3業種を見ても分かる通り、コロナショックは業界によってダメージの大きさが異なります。これは業界別の雇用環境を見ると顕著です。下図は日銀短観のうち雇用人員に関する項目で、数値が小さいほど(マイナスが大きいほど)人手不足であることを示しています。
コロナ前は群を抜いて人手不足だった「宿泊・飲食サービス」ですが、一気に人員過剰なゾーンに入ってきました。GoToキャンペーンのおかげで少し仕事が増えてきたみたいですが、足元では忘年会がほぼキャンセル状態ですから、雇用環境はまた悪化しているかもしれません。
雇用人員で見ると、「製造業」と「非製造業」という分け方でも大きな格差が見られます。12月の製造業は+5で人員過剰、非製造業は▲20と依然として人手不足感がある状態です。
融資環境はいい
現在の景気がいいとは全く思いませんが、今のところリーマンショックよりはマシだとは言えます。リーマンショックの頃は金融機関が大きなダメージを受けたこともあり、融資環境が最悪でした。
今回は、当時と違い政府・日銀が金融緩和+財政出動をしてくれているおかげか、金融機関の貸し出し態度はゆるいままです。下図は日銀短観のうち金融機関の貸出態度について調査したもので、数値が大きいほど融資環境が良好であることを示します。

日銀短観_貸出態度(ニッポンの数字)

日銀短観_貸出態度(ニッポンの数字)
金融機関の貸出態度はコロナ前とほぼ変わらないことがわかるでしょう。「宿泊・飲食サービス」に関しても、マイナスではありますがリーマンショックのときよりはマシです。
もちろんGoToキャンペーンが一時停止となり、新型コロナの感染も拡大していますので、事業環境は最悪です。先行きも見通せない状況が続いていますので、民間の融資だけでなく、政府や自治体からの支援も必ず必要です。
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